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■ 中毒性日記 2005
志賀のひとりごと、日記に綴ってみました。
変態小説家
志賀による、「志賀」を舞台にした空想連載小説。
志賀自賛
志賀の、「志賀」にかけた想いのあれこれ。
年中ムキューっ
志賀、昼の顔。
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土曜日、少し寒い神戸に繰り出した。食事がとれなかったので久しぶりにマクドナルドでテイクアウト。ビックマックが150円!!に、びっくりマックだ。子供の口では一気に頬張れない、つまりビックマウスで全バンズを噛みちぎるほどのサウザン風味のタルタルがタラタラとはみ出す勢いの潔い喰いっぷりの大人に憧れたビックマックである。300円くらいのままであって欲しいと願う。

店は静かに、男女がカウンターの端で語り合う。他に誰もいないときは、少々居心地が悪いものだが、その辺は一応元ホテルバーテンダーである。この僕も、黙って黙々と他の仕事をする。ボトルだって拭けるし、氷だって割れる。

ノックをする音が聞こえ、扉の向こうにはトトロのようなブースカさんが一人立っていた。もう何度もココで書いているから割愛するが、ブレーンでもあり主治医でもあり、語り合う同志でもある。ここ最近はずっと、山崎の水割りを飲んでくれている。10オンスグラスぎりぎりに入る大きめの氷を二つ放り込み、少し濃いめ・ジガーの水割りをつくる。この酒を作っている会社によれば、水割りのステア数は「13回転半」だと言うが、僕はそれを守っていない。液体の粘度によるものだと僕は考えている。だからそれらはヴィンテージにもよるし、樽が元々何が入っていた樽だったかにもよるものだと思っている。

山崎を数杯、旨そうに飲むその姿を見ながら僕は、その酒をマスターブレンダーのようにストレートで流し込んだ。仄かに甘い飲み口の中に、スウーッと鼻に抜ける香りもある。ブースカさんは傍らに一枚のCDを置いていた。僕が唯一ちゃんと観たジブリ作品「千と千尋の神隠し」のサントラである。そのメーンテーマ曲、あのハープのメロディ「♪呼んでいるぅ〜〜」を聞かせたいと持ってきてくれたのだ。今まで3度、ブースカさんはこの店に持ってきた。

ところがその3回ともジャケットだけで中身はなく、「あぁ〜、僕はまたやってしまった すんません、出直します」と言って、いつもそのCDを鞄に入れた。僕の店で日本人のボーカルの入った曲は掛けたことがない。だからブースカさんも、掛けるタイミングに気を遣ってくれているのだが、今までの3回は誰もいない店だったり、ブレーンのラビット夫婦だったからいつでも掛けられる状況だった。なのに中身が入ってなかったからブースカさんはさぞ気合いが入っていたのだろう。4度目のこの日は、ちゃんとCDは入っていた。

しかし仲良く寄り添うカップルがいた。今そこで、千と千尋を掛けるのは少々危険である。水割りを更に飲み続け店に入って2時間が経過し、痺れを切らしたのか酔いが回ったのか、ブースカさんは「志賀氏、一回だけ僕のワガママを聞いてくれたまえ これを掛けるのだ 大丈夫、絶対雰囲気を壊さないから」と千尋ちゃんが表のサントラを差し出した……。

前奏にハープが流れ、僕の店で初めて日本人女性ボーカルの曲が店に響いた。するとどうだろう。鼻を啜る音がするのを僕は聞き逃さなかった。カウンターの端のカップル、その女性は泣いているではないか。確かに歌詞がいい、旋律もいい。曲の素晴らしさに、彼女は何かを思いだしたのだろう。人の涙を誘うモノには、目には見えないパワーがある。

その曲が終わると満足気に「スッキリした」とブースカさんは、すぐに帰ってしまった。やっとココで掛けることができたことが嬉しくて、ブースカさんは女性の涙に気付いてなかったようだ。その後、店では近頃のお気に入り、ジェームスイングラムのアルバム「Forever More」を流していた。

「Just Once」が掛かる頃、今度は男性が感極まって涙した。「こっ、この曲でもかぁ〜!」僕はちょっと困惑しながら、他にお客様のいないカウンター、彼らの様子に聞き耳を立てた。そしてその涙が理解できた。この二人にとって、それが千と千尋でもジェームスイングラムでもよかったのだ。

彼らはこの数時間、ずっと喧嘩をしていたようである。


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