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■ 中毒性日記 2010
志賀のひとりごと、日記に綴ってみました。
変態小説家
志賀による、「志賀」を舞台にした空想連載小説。
志賀自賛
志賀の、「志賀」にかけた想いのあれこれ。
年中ムキューっ
志賀、昼の顔。
The Right ? Staff
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金曜日。今日は朝から、アシックススポーツミュージアムで、いつもの小学生相手の講義がある。この腫れぼったい目で何事もなかったように、夜の匂いと、その突然の悲しい知らせを上手く隠せるのだろうか。

あの子は九州の子で、バッテンとか言われたりしたが、僕は誰も呼ばないあだ名を付けていた。それを彼女は気に入ってくれたようで、取材だか何だかで神戸に来た時には店に顔を出してくれた。女性だけど「オイラ」なんて言葉を使っても違和感のないくらい人懐っこくて、人の悪口を言わないところがいい。店で出している枝付きの干しぶどうを見て、実家には柿の木があるから、枝付きの干し柿をつくってもらうようお母さんに言ってみるなんて話してた。それは実現しなかった。

「行きたい店って、近くにないもんですねぇ」それは彼女の口癖で、だからあってくれて有り難いと僕の店を喜んでくれた。おそらく僕が知らないだけで、彼女は神戸のたくさんの店を取材して書いていた。決して通りすがりの一見だけでは書かないこのエディターは、如何にもあの雑誌達を飾る人だったと思う。初対面で取材させてくれと言われれば断る僕だったけれど、過ごして書きたいと言われた日には、喜んで受けた。彼女の選ぶ言葉の数々を、もっと誌面で見たかった。

行きたい店は近くにないものと彼女は言ったけど、会いたい人は頻繁に会わずに、近くにいるはずなのに遠くに感じることもある。まさに彼女はそういう人で、だからいつでも会えると思って、それほどの連絡もしなかった。

ムシの知らせはあった。彼女と大阪の酒場で会い、僕の店を勧められたという若者が、3年越しのつい数日前に扉を叩いてくれたのだ。僕はすぐに彼女にお礼のメールを送れば良かったと、今思えば自責の念がある。そうは言っても、それも僕と彼女のスタンスであり、いなくなってもいるのだとしても、またどこかで会えると訃報を知った今も尚思っている。

涙はいつも突然やって来る。涙腺が弱くなったのは歳のせいではなく、感ずる心が昔より染み入るようになっただけだ。だから今は寂しさもあるが、あの子の、僕の前では愚痴や人を悪く言ったことがない笑顔を思い出すだけで泣ける。

月並みだけど、またいつか扉を突然叩くあるはずもないその日を想いながら、ただ今はサヨナラと言いたい。いや、多分彼女は、僕の店が移転したことを知らずに、ずっとマチを徘徊し続けているのだろう。そうなんだと思う、きっと。


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※今日のヒトゴトではないヒトコト&ヒトリゴト&ヒメゴト
【「ライターも大変やね」と言ったら、 「ライターじゃなくて、私はエディターなんですよぉ」って言ってこだわってたな 】


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