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火曜日。神戸では日曜と同じく、また強い雨が終日降った。マチは月曜のワールドカップサッカージャパン、カメルーン戦勝利の興奮冷めやらぬといった雰囲気である。何せ、僕の母親が一旦寝てから深夜に起きて、その終始をテレビ観戦したくらいである。その日は当然僕は店で、携帯ワンセグで覗いてみたが、小さ過ぎてよく解らなかった。数々のニュースを観れば、枠に行ったシュート数の極端に少ない日本がそのチャンスをモノにして、ゴールに何度も迫ったカメルーンがモノにできなかったようだ。サッカーは一点ゲーム。何が起こるか分らない。
さて、夜の話。店にやって来たロシアの女性は、白に近い目映い金髪で、見るからに美しかった。僕はロシアンパブには行ったことがないし、冬季五輪のカーリングくらいでしかお目に掛かったことがないが、三宮の夜には結構多い人種だそうだ。欧米の女性と何が違うかと言えば、肌が綺麗で白く、日本人に近い背格好の人が多いということくらいしか知らないのだが、実際そういう人を目の前にすると、ロシアンパブに通うオヤジの気持ちが何となく理解できる。
「コレ、オイシイデスネ ナンデスカ?」
顔が外人だというだけで、それがインド人だとしても、いつも出す酒の「アテ」である乾き物には思案する。ピスタチオなどナッツ系か枝付きレーズンなら無難だが、日本人が連れて来た場合には、あられやおかきを出してしまう。日本人がポテトチップスを食べるように、味覚というものは単に食べたことのないだけで、意外に口に合うものだってあるはずなのだ。だから、出してみる。
「それはですね、『牛せん』という大阪のあられです」
ギュウセン?ソレハナニデデキテイマスカ?聞いてくるので、牛肉とそのパウダーを練り込んで揚げたものですよと答えた。日本に来て4年、言葉はかなり理解できる人だったから楽だった。ところが「牛肉」という言葉に過剰な反応を示す。
「ギュウニクハ、タベテハイケナイ! デモタベテシマッタ、アァ…」
と落ち込んでいる。多分ロシアの人がそうだというわけではなく、この人がそうだったのだろうが、エラい落ち込みようである。何だか、とんでもないものを出してしまったようで申し訳なくなった。コレは話題を変えて和ませようと思った。
「日本って四季があっていいでしょ?」
「ヨクニホンジンハソウイウケド、コンナノ『フユ』ジャナイヨ!」
「日本には、どういう目的で来たのですか?」
「ソレハ…ソレハ、イエマセン」
他にも、友達のロシア人がやってるバーの名前が「KGB」だと言っていた。
極寒ロシアからやって来たこの女性。
僕が思うに、彼女はスパイだ。
※今日のヒトゴトではないヒトコト&ヒトリゴト&ヒメゴト
【 「ニホンニサムライガイナクナッタネ」 と嘆いていた】
※志賀氏的伝言板
【現在店舗最終営業日まで、 あと10日! 】
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