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木曜の店で、フランスから帰ってきた友人Y川がその興奮を伝えてくれた。開催ホスト国フランスだという事もあるが、マチは空港からしてラグビー一色らしい。大学同期、 村上のブログ によれば、エッフェル塔にもラグビーボールバルーンがぶら下がっていて、マチの会話と言えばラグビーだそうだ。友人は仕事の契約事に絡めて、ワールドカップ、ラグビー日本対オーストラリア戦をリヨンで観た。40000人の観客、静観する日本とは違い、常に声を上げわめき楽しみながらの応援。周知の通り日本は大敗を喫したが、翌日の彼の仕事、フランス法人との契約事は、互いに初戦を落とした者同士という共通項もあり話は上手く行ったようである。
こと日本に於いては、マニアやオールドファンが「ラグビーを知らない者は来るな!」「にわかファンに何が分かる!」的な姿勢を持つ人がまだまだいたりするが、フランスでは「日本がラグビーが強いかどうか全く知らないが、わざわざ日本からラグビーを観に来たんだろ 楽しんで行けよ」と仲間に入れてくれるマチ全体の土壌がある。友人がフランスに到着した初日、向かったレストランではちょうど開幕試合「フランス対アルゼンチン」を中継していて「これからフランスが素晴らしい試合をするから、それほど強くない(しつこい)遠く日本から来た君も一緒に応援しよう まぁ、勝つのは我が国だけどね トレビィア〜ン」と言ったかどうかは知らないが、通訳を介して聞けばそういうことだったらしい。SUMOは知っていても、ラグビー日本はほとんど知られていない。
ところがその開幕戦、まさかのフランス敗戦である。近年アルゼンチンの台頭はめざましく、ヨーロッパなどで活躍する選手もいて世界ランキングも一桁台をキープしているが(開幕前でランキング6位 フランスは3位)、やはり上位の優勝候補にも挙げられる開催国フランスの勝利は大半の予想だった。フランス人は母国が勝つことを疑わなかったから、その瞬間、場は静まり返り、頼んだ料理も酒も出て来ない。もう帰ってくれ状態となる。大袈裟でなく、おそらくフランス全土がそういう空気に包まれたのだろう。欧米や南半球のラグビーが盛んな地域にはよく起こる現象だが、日本人である友人が、その渦中にいられたことはとてもラッキーだったと言える。まず日本では観られない光景(阪神ファンの集まる居酒屋くらい)であるからだ。友人は更にラグビーファンになって帰ってきた。日本のラグビーももっと、「生で観る楽しみ」を抱かせる受け皿を考えるべきだ。
しかし、13日午前1時からの日本対フィジー戦は興奮した。ランキングで言うと18位対12位の格上だが、可能性は充分にあった。2時過ぎいつもの中華店に滑り込むと、またよく解らない番組が流れてる。中国人家族の観ているチャンネルと言えば、香港ドラマかNHK、しかもウミガメの産卵みたいなドキュメントか世界の車窓からみたいな番組ばかりである。「変えるよ」と日本テレビにすると、総理大臣辞任により番組編成がずれたお陰で、後半は全部観ることができた。
18歳の中国人息子は、真剣に観ている僕に言う。「オニイサン、アヒルスキデスカ?」あひる?ピータンは食べた事があるけど、好きか嫌いかと言えば好きかな。「ドウゾ、サービスデス コレハチュウゴクノアヒルデス ニホンノアヒルトイウノハ…」僕はほとんど聞いていないが、説明に頷き有り難くいただいた。
ここの水餃子はスープに入っていて意外に美味い。「ニンニクスキデスカ?」嫌いじゃないよ「コレヲイレテチョットオス(酢)ヲイレタラ、フッケンショウノアジニナリマス」ふーん、そうなん。僕、ラグビー観てるからね。「ラグビーハワカリマセンカラミテモイミガナイ…アッ、デモコレハ、ワルイカンガエデス」…
4点差、ラストワンプレー。日本必死の攻防。歓声でサインが聞き取れない双方のチームは、ただボールを前に運ぼうとする側、それを阻止しようとする側の古典的なラグビーを繰り返すしかない。倒れても次のポイントのフォローに走る。ボールを左右に動かし、人数の余った側にゴールは見えてくる。足を止める事がすなわち敗北を意味するが、まだボールは死んでいない。その光景はまるで、ノーディフェンスで殴り合う、最終ラウンドのボクサーのようであり、僕は息をするのを忘れそうになっていた。もうそこが中華店であることを忘れて立ち上がり、声を上げながら、日本のトライ5点、逆転となるはずのボールの行方を追っていた。
フィジーが外へ蹴り出した時点でノーサイド。
日本は歴史的な勝利を逃した。
「どうや!ラグビーって凄いと思わへんか!?」
僕は、中国人の18歳に声を掛けた。
「ハッピャクゴジュウエンデス」
興味がないらしい。
※今日のヒトコト
【アルゼンチンにラグビーの土壌があるとは思えないのだが、2000年以降くらいからなぜ強くなったのか? 村上、教えてくれ! 】
※志賀氏的伝言板
【 9/16、17はお休みします 】
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