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■ 中毒性日記 2007
志賀のひとりごと、日記に綴ってみました。
変態小説家
志賀による、「志賀」を舞台にした空想連載小説。
志賀自賛
志賀の、「志賀」にかけた想いのあれこれ。
年中ムキューっ
志賀、昼の顔。
The Right ? Staff
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土曜日午後、長田の苅藻マリーナに行く。友に電話を掛けると、友のアニキの船にいるという。本格的な釣りを楽しめる37フィート級の船だ。アニキの船は漁船のようで、アニキの頭は潜水艦のようでもある。日曜にこのマリーナクラブのBBQがあって、その準備に皆あれこれ忙しくしていた。ちょうどペンキを塗っている時で、やれ錆び止めはどこ行ったとか、千枚通しはどこにやっただとか言っている。

船内でペンキ缶を見つけた初老のオヤジさんが「いつも、あんな感じやねん」とモノの在処を互いになすり付け合っていた。その姿は子供の頃の、「オレが埋めて育ててた土の玉、掘り起こしたやろ!」とか「基地に隠してたビニ本、誰が持って行った!?」などという会話に似ていて、半分以上が奥さんや家族に内緒で密やかに夢を叶えた船長達の、ここは遊び場のようだった。オヤジさんは見つけた錆び止めの入った缶を持って「この缶、サビとるがな」と子供みたいに笑った。

新しい会社の名刺の依頼があって、その打ち合わせに三宮へ出向いた。男性3人を前に、画面上でロゴやその意味を説いて終了。このプロセスが楽しい。

店に向かおうと路地を歩いていると、子供が一人で「壁当て」キャッチボールをしていた。僕が世話になっているクリーニング屋の息子(5人兄弟の末っ子?か 小学校低学年といった感じ)である。ここの親御さんは彼等に手は出すし本気で怒鳴りつける。今時珍しい光景なのだが、鼻水垂らしたその子達を見る度に、その時代錯誤も甚だしい家族をどこか懐かしく安心したりする。(過日も長男を寒空の夜中に道路に放り出して、家に入れないようにしていたのを見た)

ふと見ると、その末っ子は突然隣接する豪邸の壁をよじ登り始めた。どうやら跳ね返ったボールが、隣の家の2階部分に引っ掛かったらしい。低学年でも、柵を足場に(この境界線の柵も隣のものだ)、器用に配電盤周りの導線を伝って2階に手を伸ばす。金属バットをそのボールに向けるも、悲しきかな低学年では届かない。何度かトライしてその子はアスファルトに降り立ち、親に言おうかどうか何度か迷い、クリーニング店に入って行った。

すぐに出て来た子は、浮かない顔をしていた。「どうした?お母さんにちゃんと言ったか?」と僕が近付くと子供はコクリと頷いたがその顔で、そんなとこで遊んでるからや!と一蹴されたと想像が付いた。「取ってあげるわ いつも世話になってるからな」と僕は柵に向かおうとしたが、子供は「いいです」と言う。そりゃあそう言うに決まってる。親に放っておかれ、違う大人にしてもらうことはいけないことだと、この低学年にもなんとなく解る話だ。

「ほら、貸してみろ」柵に足を掛け身長の1.5倍になると、子供の頃に一瞬戻った様な気がした。低学年が登ったルートを使わずとも、それは180cmの身長でなんとかなって、手の足りない分は金属バットの登場となった。ほどなく、何度も壁に当てられて凹凸の少なくなったボールは生還を遂げ、子供はちゃんと「ありがとうございました!」と礼をした。僕は「お母さんに内緒やぞ」と言って店に入った。

この時代だ。遊び場はマチに少なくなり、自分達でルールを考えないゲームが溢れかえり、それは大抵手の中に収まるパームサイズにある。僕らの小さな頃になかった「攻略本」や「ソフト」は、傾向と対策の赤い本のように、その壁やステージが終わればどこかに追いやられてしまう。まるで用無しだと言わんばかりに。

土曜日、子供みたいなオヤジ達と、子供らしい子供に会った。

錆び付いたアンカーや、船を傷つけないように装着するタイヤも白く塗り直していた。拾い上げた擦り減ったボールは、おそらく兄弟の「お下がり」だ。

楽しむための工夫、ルール、そしてモノを大切にすること。

そういった類いは、パームサイズでは収まらないものである。


※今日のヒトコト
【お母さんに 「どうやって取ったん?」 と聞かれたら、あの子はどう答える?】

※志賀氏的伝言板
本日、南部さんお世話になります!


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