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突然だが、炊飯器に限界を感じていた。
塩屋に来てから買い替えた記憶がないので、もう10数年が経つ。
見るからに古い。その昔主流だった「白」である。まだ「IH」などない頃のモノだ。
ニューロ・ファジーなどと書いてある。
ファジーが流行語だったのは1990年。
死語である。
興味を持った切っ掛けは、ブングー長澤夫婦だった。
「今の炊飯器って、めっちゃ美味いですよぉ」
少々高価だったが、揃って感動的だったご飯の仕上がりに、大満足だったそうだ。洗濯機と並び、本物志向に合致した高級商品が売れているという。しかしほとんど自炊をしない僕にとって、こだわるべきところではないと近頃忘れていた。
日曜日、近くにできた複合施設に別件で行った帰り、その隣の家電量販店で何気なく炊飯器を見た。銅釜やダイヤモンド&備長炭練り込み釜、土鍋、5層にもなった強力IH加熱、銀シャリスチームなど新しい機能が満載である。やはり売れ筋ランキングも高価格帯が上位を占める。価格を見たら35%引きでもなんだそりゃな金額。これはオーブンレンジなんですか?と、ふぅ〜んてな感じで帰ってきた。
ゴルフクラブで、新品を競り落としたことがある。受注生産で、探していたスペックのヤツだったからかなり嬉しかった。そのオークションサイトで、さっき見た「炊飯器」を検索してみる。あと数時間で終わる最新型の炊飯ジャーに、どうせ無理でしょうとチェックだけしてみた。便利なもので、オークションが終わる15分前に、登録したアドレスに連絡が入るからだ。
携帯に連絡が入る。確認すると直前に値が上がるはずの競り合いがされてない。僕は知っている。終了直前をギリギリ寸前まで待つ。必ずグンッと上がる。
10分前、上がらない。5分前、まだ開始価格とそう変わらないままだ。
僕は、まぁこの金額なら僕の毎月のお小遣い(独り身なのに小遣い制か!)で何とかなるなと、入札単位の金額を乗せてアップする。どうせ上回る金額を入札してくるヤツがいるのだ。冷やかしになりそうな僕だったが、気分はサザビーでロートレックを落札する紳士のように、この待ち時間を真摯な紳士、ニヒルなアヒルで待つことにした(ナンなら、マカオのオカマでもいい)。僕は、初めチョロチョロ、中パッパと焦らされ蒸らされ、まさに炊飯を待つ気分になっていた。
終了時間がとうとうやって来た。
……えぇ〜!!そうなん!!!
他店徹底比較攻勢の量販店もビックリである。
ナンと新品未開封の最新炊飯器が、75%引きで僕の手に落ちた。
※今日のヒトコト
【 めちゃ暇やったら、代理落札者っていうバイトお勧めです 】
※志賀氏的伝言板
【 旨いメシ炊かせてもらいます! 】
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