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歩車分離という言葉は、長万部（おしゃまんべ）と似ていると気付いた志賀でございます。連休が明けて、イマイチすっきりとしない身体である。
先日店で、新渡戸稲造の「武士道」翻訳本を読み返し、太宰治「人間失格」なんぞも読んでいたりしているとどうやら没頭してしまっていたようで、お客様が入ってきたら驚いてしまってた。これらの本も、多少なりとも僕に何がしかの影響を与えてくれたわけだが、お客様と話してて意外にも、僕は漫画にも感化されていることが分かった。
「愛と誠」（作 梶原一騎 画 ながやす巧）「暴力大将」（作画 どおくまん）「男組」（作 雁谷哲 画 池上遼一）が、僕のバイブルである。
どれもが家族・男女・同志・男が描かれていて、そこには必ず「痛み」「怒り」「バイオレンス」、その反面に「情け」「悲哀」「優しさ」が付いて回った。思い返してみれば、僕の人格形成もその辺りが関係していて、たかが漫画にもある原作というもののつくり込みが、しっかりと記憶に植え付けられたんだと思う。基本は武器は持たず生身の体で、身を賭し体制に立ち向かう主人公は孤高の人だった。
僕は彼等に憧れて、いつしかそういう男になることを夢見てた。
しかし、火曜の僕は少々疲弊気味だった。なんともできないジレンマに苛まれ、なぜ自分だけがと思う心に情けなくなっていた。勇気がない。そんな一日だった。
しかしそれも、店に立てば変わる。
大手酒造メーカーの営業マンが店に来た。入社して1年目に上司に連れてこられた彼も、もう30歳になる。初めて店に来た時、彼には僕に対する鮮烈な印象があった。「営業するんやったら、他の店に行ってくれ」入ってすぐに名刺を出そうとすることを制した僕に、他のどの店にもない「？」を感じたらしい。
その言葉だけを取れば、それはかなり横柄な店なんだけれど、その先がある。「何軒もの店に営業に歩き、最後に『自分の店』だと思って来るような店にしてくださいよ」そういうことを言ったところで、上司に連れてこられている店だ。『自分の店』にするには時間が掛かるものである。そしてそれなりの時が経ったこの日。
「この店は唯一、自社の酒以外を飲んでいいって上司に言われてる店なんだ」
愛社精神も解るが、他社の酒を知らずして売るということの何が愛社精神なのか。
一緒に来た後輩にそう話す彼は、おもむろに幾つかのパンフレットを取り出した。
「新しい商品が出たんですよ」
7年経って初めて彼は、彼本来の仕事「営業」を僕にした。
そのちょっとした勇気に敬意を表し、僕はその商品を仕入れることにした。
店に立てばやはり変わる。
僕の勇気も湧いてきた。
あの日見た、漫画の主人公達が頭の中を走り回ってる。
※今日のヒトコト
【的を得るんじゃなくて、 的を射ないとね 】
※志賀氏的伝言板
【 発売中の「BRIO 3月号」P.108に志賀が…… 】
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