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ここ数日は暑いくらいの晴天が木曜夜半、中途半端な雨が降った。しかしこれくらいの雨では、寒い冬とはならず。春野菜が出回っている、不思議な気候である。
水曜の日記は更新しなかった。新しく踏み出している（もしくはこれからの）男達が何人か店に来たからだ。コーチの立場で若手育成に勤しむ男、長年続けてきたスポーツを辞めて異業種に挑戦している男、会社に勤めながら現役続行を選んでいる男、目の前の妻と向き合う事を決めた男……。そういう面子が集まって、閉店後の日記を書く時間が取れなくなった。頭の中で自分に置き換えて噛み砕きながら、僕の足跡のつま先がどこに向いているのかを、考える時間が欲しくなったからだ。人は、そしてこの店は、時に僕の鏡になる。
木曜の店に、注文していないビールの小瓶が入っていた。鍵を渡している出入りに酒屋さんからのものだった。サントリー「ザ・プレミアムモルツ」人気商品の3月に発売となる小瓶である。サッポロのエビスビールが独走を続けていた高級志向ラインが、このプレミアムモルツの出現で他社も巻き込んで変わった。時代は二極化の波、廉価版の発泡酒、第3ビールとシェアを分けた。関東では高級料理店に、関西では居酒屋に多いという地域性はあるものの、モンドセレクション（世界食品品評会）で日本のビールメーカーとして初の金賞を獲得した勢いで、今や食前酒、食中の「脇役」から、食後の「飲み物」として認識されつつあるヒット商品だ。
酒屋さんに聞くと「志賀さんは、プレミアムモルツのポスターつくってたから、多分注文してくれるでしょ」と、サントリーの営業担当が言ってたらしい。確かに京阪神の販促ポスター数点をつくった。矢沢永吉がCM決定と聞いても、関西のプロモーションはもっと「ベタ」で行くべきだと、何度も担当部長と議論を重ねた甲斐あって、販売店には好評だったと聞いた。小瓶のボトルデザインもゴールドだけでなく、イメージカラーの紺を採用。現行モルツとは一線を画す風体は、高級感がある。ビール販売で苦戦を強いるサントリーは、おそらくモルツからプレミアムモルツに移行するのだろう。化け物「ラガー」「一番搾り」や「スーパードライ」「エビス」と対抗するに、賢明な選択だと思う。
神戸の商業施設の方から、持ち込まれた企画についての意見と評価を求められた。もちろんそういう仕事（これもクリエイティブディレクションの一つ）もあったりするが、このお話は外部のブレーンとしてのことで仕事ではない。しかし、外から見ると色々解る。その企画にそこでやるためのストーリーはあるか、ネーミングは多くの人びとの呼称となり得るのか、他の場所でのイベントとの連携はあるのか。「俯瞰で観る」、そういう目は外部の人間に限る。
店も、もっと言えば人生も、俯瞰で観ないといけない時がある。
僕は近頃、前と後ろしか見てなかったような気がする。
※今日のヒトコト
【 11、12日休むかも 】
※志賀氏的伝言板
【 発売中の「BRIO 3月号」P.108に志賀が…… 】
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