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金曜日の店が終わり、土曜の昼イチにある打ち合わせに向けて朝まで店で寝ることにした。幸いにもホテル支配人の配慮で昼に部屋は借りられたので、そこで着替えや仮眠、打ち合わせもできればと思っていたからだ。
土曜午前10時、店で歯磨き（頭の中に流れるのは「傷だらけの天使」のテーマ）顔を洗い、ネットで新世界のバーを検索、トップページに成田一徹さんの切り絵（実は情熱大陸に出ることよりも、この人に店の切り絵をツクッてもらいたいとずっと思っている）があることを確認。大西ユカリさんやブルマンおすすめなのも頷ける内容に、食指ならず飲指が動かされる。東京の出版社からの依頼で取り組んでいる、RWC広告（何の略でしょう）のチェックをしながら、11時店を出た。
北野のアッズーリのPIZZAを食べようとトアロードを上がれば、ランチタイムは12時からということで仕方なく、まず地元の人間は行かない「北野工房のまち（旧北野小学校跡）」に入って時間をつぶすことにした。オーナー職人の小崎氏はすまなさそうに「今度志賀さんの店に行きたいのですが、カードがないと入れないんですよね」と言うので、「知らない人が突然来ないようにしてるだけ こうして関係ができたのだから、知らない仲じゃないですよ」と返した。
北野工房のまちには、確かに観光客しかいない。どこかでPCを開け作業できる場所はないかなと探すと2階に無料休憩所があり、コンセントから電源も取れて、おまけにAirMacのオープンワイヤレスがこの近辺のどこかにあって通信ができることを知った。歴史のある小学校跡だということもあって、床は油ひきをして輝きそうなフローリング、階段の手摺も木である。休憩室はまさしく多目的教室だったようで、黒板や木の本棚とベンチ、勉強机と椅子がある。今年43歳は耳にウォークマンでジャミロクワイを聴きながら二宮尊徳のように、先生のいないまさに自習に勤しんだ。今後はここで、色々仕事が捗りそうである。
12時ちょうどにアッズーリに行き、ランチを注文。それとは別に2枚目のピザを頼むタイミングが遅れたので、PCを開いて待つことにする。ここでもさっきのオープンワイヤレスが届いていて、ネット環境にあった。しかし繁盛店で、長居をしてはいけない。見る見るうちに満席となった店内をあとにした。
その後、ワインセミナーなど何かとお世話になっているホテルに（この日も昼間だけ部屋を借りたから）北野坂カファエルのチョコレートを手みやげにチェックイン。フロントにお預けしたが、食いしん坊支配人には行き渡ったのだろうかと心配しつつ、リフレッシュ＆お仕事。あっと言う間に17時半チェックアウト。
店は夜半の冷たい雨にやられたのか、静かな時間が過ぎる。僕の親のような世代の両親を連れて来た孝行息子がいた。話せば話すほどオヤジさんは、職人気質で誰かに似ている。自分がいないと会社は成り立たないと、入社したばかりの若かりし頃から思ってた。社会のため、人のため、マチのため、損得勘定よりも頭で考えるよりも、思うがままに心で動いてきた。おこがましいが、近い感じがした。
僕と似ているんだなと気付いてからは、オヤジさんから息子、今年42歳への言葉が僕に言われているような気がした。ご両親は昭和39年にご結婚された。つまり、僕の年齢だけ夫婦生活があり、その翌年に新しい家族が増えたのだ。「バーなんて、一緒に行ったことがなかったよね」そう言うお母さんに、「こんな色々な話も、お前にしたことがなかったな」とオヤジさんは息子に言った。
家族が、初めての会話を僕の店でする。僕が今できない、そんな言葉の数々を噛み締めながら、静かに時が流れる店でよかったと思えた1月最後の土曜日である。
※今日のヒトコト
【「誰も来んなぁ 心配やなぁ」そのオヤジさんが何度も言うので「いらん心配せんといてください」と僕は言ったが、 親に言われているようで嬉しかった 】
※志賀氏的伝言板
【 発売中の「BRIO 3月号」P.108に志賀。ぷぷぷっ。（店は載ってない） 】
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