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■ 中毒性日記 2003
志賀のひとりごと、日記に綴ってみました。
変態小説家
志賀による、「志賀」を舞台にした空想連載小説。
志賀自賛
志賀の、「志賀」にかけた想いのあれこれ。
年中ムキューっ
志賀、昼の顔。
The Right ? Staff
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僕はここ数日「何か」をどこかに忘れてしまっていたんだと思う。自分に巡る悪い空気を吐き出す術にも気付かずにいた。そしてなぜか今思いだしているのは、先週末に来ていたハウスメーカーのKクンが言ってた話だ。

僕の4つ下の彼は、この店に来るようになってから6年ほどになる。彼女が出来た、彼女と結婚する、転勤になった、また神戸に戻ってきた……僕は彼の数年を傍らから見させてもらっている。そもそも彼との出会いはオカシナものだった。

今から6年前、あるお金持ちのお客様から、なぜか僕に住宅デザインの依頼があった。六麓荘の300坪の土地・建物には数億円掛けるなどと、バブルはどこへやらの大きな話に胸膨らんだ。ただしいくつか条件があって、それが少々難しいモノだった。コンセプトデザイン・設計管理はこちらサイドで。しかし、施工に関しては付き合いのある先方のハウスメーカーに任せる、との事。解りにくい話で恐縮だが「ユニフォームはアディダスで、スパイクはミズノで、移動用のウェアはナイキで」みたいなもんである。これは難航するな、と思ってた。

デザインはかなりリベラルに進んでいった。離れに大きな風呂を設け、遮るモノのない夜景の見える立地を最大限に使う、さしずめ温泉宿だ。地下駐車場からエレベータで各階へ、一階リビングには床から天井までのアールのウインドウ。明かりを消して星座のような夜景を楽しむ。広く緑のある庭でのガーデンパーティはもちろん、3階テラスは展望台のよう。なんとも羨ましい家である。

その施主さんが、ハウスメーカーのKクンと初めて来て「今回一緒に家を建てる仲間だ」と紹介してくれた。物腰の柔らかい、関東言葉を話す30歳前の青年だった。彼とならうまくやれそうだと、サザンのいなせなロコモーションの歌詞のように、新しい家に想いを馳せたことを思い出す。

施主さんが店に来なくなり、連絡も付かなくなったのはそれからすぐのことだ。僕は「やられたな」と思った。やられたな、つまりデザインも設計管理もその他も全てハウスメーカーに取られたんだと思った。この業界ではよくあることで、ひどいのになるとこちらの設計図面までパクられることもある。そのために契約条項が色々あって(所謂キャンセル料らしきモノ)、潔くここは仕方がないとハウスメーカーの彼に電話を掛けた。………「ウチもやられたんですよ!」

大手メーカーの彼も嘆いていた。この場合「やられた」という言葉は、少し棘がある。でも当時を振り返ると双方が自然と口について出た言葉だから、リアルにここは書く。ともかく、どちらもが契約を棒に振ったわけで、設計図面や提案模型、プランニング料に関しては水の泡と消えた。「まだ何も始まってなかったから、これくらいで済んだんだ」と諦めた。ちょいと辛い出来事だった……。

そしてKクンが1人で店に来るようになって、6年が経った。今では「そんなこともあったねぇ」などと笑いながら、酒の肴にするまでになっている。先週末に彼は支店長達とココに来て、皆が帰った後、一人残っていた。近頃売上げ・契約が上がらないと話す。そして、彼がこんな事を言った。

「ホームセンターに電ノコ買いに来る人がいて、高い電気ノコギリが売上げになるのに『あぁ、それだったら糸ノコで充分ですよ』って提案する店員って凄いですよね 僕はその部分が、今欠けてるんじゃないかなぁって思うんですよ」

相手にとって本当に必要なことは?……そんなシンプルという言葉に片付けられない想いに、僕がどこかに忘れていた「何か」を見たような気がした。何かとは「笑顔」だったり「提案」だったり、『人がいて初めて成立すること』だ。今までに散々ココで書いてきたことなのに……穏やかに、たおやかに、自然にだ。

女の子も、求めると逃げてゆくものだしね。それは、チト違うか。


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