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■ 中毒性日記 2003
志賀のひとりごと、日記に綴ってみました。
変態小説家
志賀による、「志賀」を舞台にした空想連載小説。
志賀自賛
志賀の、「志賀」にかけた想いのあれこれ。
年中ムキューっ
志賀、昼の顔。
The Right ? Staff
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天気が悪くなると言うが、月曜の外は心地よい。ハーバーランド近くの郵便局に行くと、「すっぴんでごめんね」と言いながら、三宮のクラブの女性に声を掛けられる。もう僕はほとんど、神戸の人になっているのだなと気付く。もうすぐ店は、この夏で8年になる。

僕は時計をしない。腕時計をしなくなった理由は2001年の10/9日記に書いた。ともかく不自由はしていないのでとっくに忘れていたのだが、雑誌の取材で「拘り」について聞かれそうなので、ちょうど20年前1983年1月発売の時計を引っ張り出してきた。SEIKOスピードマスターシリーズ・ジウジアーロモデルである。モータースポーツのグローブをしたまま操作出来る、イタリアのデザイナー仕様だ。電池が切れてもう何年になるのだろう。電池交換を思い立った。

頼くんに教えてもらった、大丸の北側の時計店は申し訳ないが入らなかった。どう見ても老舗で、しかもブルガリブティックにも似た外国建材をふんだんに使った内装は重厚である。「何かお探しですかぁ〜」と聞かれて「いやぁ〜、息子にアイクポッド・マークニューソンモデルを買ってやろうと思ってねー、僕はトゥールビヨンならナンでもいいんだけどね おっほっほ」などと言いながら、結局は電池交換を告げられずに、何も買わずに出てきてしまうのは目に見えている。ええカッコしぃの僕はスルーした。

で、元町に住む地元の子に聞いてみると、元町駅から西の高架下にお手軽な店がゴロゴロあると言う。大阪なら十三・西中島南方、神戸なら新開地・湊川など、ディープ地帯はお手の物(死語)である。と言いながら、そこは行く機会がなかったので12年間通ったことがない。表通りに車を停めて探す。

JRの高架下、特に駅から西に行くほどに左右にシャッターの下りて久しいと思しき店が多い。まだ16時を過ぎた夕方なのに、全体に暗い。一坪にも満たない店舗が、ポツリポツリと続く。昔のレコード、ビデオ、電化製品、おもちゃ……大阪の日本橋や新世界の路地にはこんな場所・風景があったな。僕が通る度におっちゃんやおばちゃんが顔を上げるが、すぐに俯いてしまうかテレビを観ている。

その先に「時計修理・電池交換いたします」という手書きの看板(と言っても紙)が見えた。この人達は、この仕事だけで一日を終えるのだろうか。家族は?家は?そんないらぬ心配をしながらも、反面「このおっちゃんで大丈夫か?」などと少々不安になりながら狭い店に入る。

「再生のみ」と貼られたYAMAHAのデッキ、真ん中に白黒テレビが付いたラジカセ……しかしショーケースにはSEIKOの古い腕時計が並んでいるのにホッとする。おじさんは「5分くださいな」と言って、虫眼鏡のようなメガネを掛けて、ベゼル裏側を分解する。手際がいい。職人だ。

「いい時計ですねぇ」 そう言いながら、「電池が切れたらそのままにしない方がいいですよ いつもコイツらは動かしてあげないとねぇ」と、隙間の汚れを歯ブラシや爪楊枝で取ってくれた。ジウジアーロモデルは、何年かぶりの友に会う一瞬の躊躇のように、恥ずかしそうにデジタルの文字で挨拶をした。僕は笑った。

そして僕は高架下の職人に一礼し、その感動に敬意を表して「お釣りはいりません」と言い、一枚の札を置いていった。

またしばらく、腕時計をすることになりそうである。


※本日の志賀・ヒトゴトではないヒトリゴト
【置いていったん1000円やったけどね……】

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【「Tシャツ、あたしでも買えるのかな?」というご質問 もちろん、このサイトを見て下さってるアナタなら、どなたでも……】

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