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■ 中毒性日記 2003
志賀のひとりごと、日記に綴ってみました。
変態小説家
志賀による、「志賀」を舞台にした空想連載小説。
志賀自賛
志賀の、「志賀」にかけた想いのあれこれ。
年中ムキューっ
志賀、昼の顔。
The Right ? Staff
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日曜よりは少し寒い、夜半には雨となった神戸である。

ずっと気になっていた奥歯の治療に行く。「治療は終わりました。次回からは、月に一度歯のお掃除にいらしてください」と何ヶ月か前に言われてから行ってない。歯の掃除くらい、子供でもあるまいし……なんて思ってたら、やっぱり痛みがやってきたのだ。4/8代理日記のブースカ氏のところに行く。

コレが結構厄介で、銀色をした人工的な2本、左の奥歯とそのすぐ横の間に巣くう虫。神経を取るために麻酔を何カ所かに打たれ、ウィンウィン、ガリガリと削られてゆく根本に残った本当の歯。それがチョイと痛くて「痛かったら左手を上げてくださいねぇー」と言うブースカ氏に僕は、それほど痛くはないが少し痛い、という表現に迷っていた。腕全体を上げるのではなく、手首を返して控えめにアピールするというのは伝わりにくい。結果、ベタではあるが、親指と人差し指に1cmほどの隙間を作り「チョット」とアピールした。

「頑張ろーねぇ〜」と、あまりに分かりやすい返しをされて治療は続く。もっと早く来れば良かったと後悔したのは、もう何度目なのだろう。

三宮に少し早く着いた。僕は1人で行こうと、起きたときから決めていた和食の店を目指す。麻酔は1〜2時間効いてるから、食事はその後と言われていた。自分の頬を強く噛んでしまう可能性があるからだと聞いたけど、美味しさにほっぺたが落ちるなら本望、そんな料理を食べてみたかった。僕はそう決めていた。

その筋は時空の世界に迷い込んだような路地だ。街灯もない草が好き放題生える空き地、もう誰もいないビジネスホテルの売り物件、ひっそりと明かりが灯るスナックらしき海峡の名を付ける店……でもこれは多分レトロではない。ノスタルジーでもない。紛れもなく、今の作られた三宮なんかではなく、
ただ「そのまま」の街なだけだ。

19時から予約があると言うオヤジさんに、出直そうとすると「まぁ食べていってえな」とカウンターに案内されて、オヤジさんの話という肴と料理に暫し舌鼓を打つ。奥の座敷では貸切の宴会の14名がもうすぐやって来ようとしているのに、まだ誰もいない早い時間の店で、オヤジさんは僕と話してくれた。恩師の書いてくれた言葉を書いた色紙の有り難さ……枯れた花のある花瓶を指差し「こうやって飾ればずっと生きてる。わし、こんなん好きやねん」……しかし多くは語らない。想いが伝わる嬉しい時間、また来たいと心底思った。この場所も「ただそのまま」の店だからだ。そしてそんな想いはその後、尚一層深まることになる。

手洗いには真正面に、誰かに送られたと思しき9日の日記のファクシミリが貼ってあった。 (おそらくあのブースカの仕業だ!)

またこのカウンターに座っている僕を、想像するに容易い。
きっと時間の問題だ。


※本日の志賀・ヒトゴトではないヒトリゴト
【多分奥歯の治療にガリガリやった振動のせいだろう ラグビーで昔折れた前歯が夜、店で抜けた あのオヤジさんと同じ歯になってしまった】

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