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■ 中毒性日記 2003
志賀のひとりごと、日記に綴ってみました。
変態小説家
志賀による、「志賀」を舞台にした空想連載小説。
志賀自賛
志賀の、「志賀」にかけた想いのあれこれ。
年中ムキューっ
志賀、昼の顔。
The Right ? Staff
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微かに雨が降り少し気温も低いが、6月のそれとは違う雨に過ごしやすい水曜日である。読み始めた、ニッカウイスキーの創業者について書いた本に、偶然仕入れたハイランドスコッチ「ロングモーン」の蒸留所が出てきて驚く。こんな静かな日には、そんなちょっとした偶然が起こるモノである。

ずっと探していたものが見つかったりすると、言い知れぬ感動と、寡黙な普段からは想像できない饒舌を生むことになる。僕の場合は饒舌は常ではあるが、その感覚は解る。ただそれは、その場所と人に起因する。発する言葉や、感情を受け止めてくれたり、お互いを尊重する上での対話が成立し、共有できる空間があってのことだ。どこでも、という訳じゃない。

そのお客様は前田氏(Meets5月号P.68「端くれ醍醐」参照)のご紹介でやって来た。前田さんは人の繋がりを大切にする人で、同じ酒を扱う者としてスタイルは違えども、思いには近いモノがある。会えばそんな話もするが、いつもさりげなく接してくれる。その店のお客様であるその方とも、前田さんはプライベートを共に過ごし、お互いが理解し合える関係になったのは一年の時を経てからのことである。一年が長いかそうでないかは問題ではないが、時間はそうやって掛けるものだと僕も思ってる。初対面で意気投合は少し希薄だ。

その一年の間に、僕の店の話は何度か出たそうだ。どのように伝わったかは僕も聞かなかったし、そのお客様も言わなかった。もちろんそんなことは気にならなかったし、それはどうでもいいことだ。要はその方がここに来て、酒を飲み、帰っていく……そしてまた来るかどうかだけのことだ。

そのお客様が2杯目のバーボン・ジョニードラム15年を飲み干したとき、
こんな話をしてくれた。

「僕はお酒が好きで、こうやってバーを巡ってる。夢にまでバーが出てくるんですよ。例えば1件目が前田さんとこで、2、3件までは馴染みの店なんだけれど、最後に飲む店だけは何度見ても知らない、覚えがない店なんです。
僕はそうやって探し続けているのかも知れない。最後に2杯飲める店、そして家路に就く……そんな店をね。いや、初対面でしゃべりすぎたようです」

「その店が暗ーい、こんな感じだったことは覚えてる」そう言い残してお客様は、この店を出ていった。2杯飲んだという偶然の余韻がカウンターに残るこの店が、そのお客様にとっての「夢に出てくる店」なのかどうかは分からない。
でももし、あのお客様がいつかまたここに来たのなら話してみたいものだ。

夢の続きを。


※本日の志賀・ヒトゴトではないヒトリゴト
【しかし静かなことには変わりない そろそろ行列……それはナイ】

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