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■ 中毒性日記 2003
志賀のひとりごと、日記に綴ってみました。
変態小説家
志賀による、「志賀」を舞台にした空想連載小説。
志賀自賛
志賀の、「志賀」にかけた想いのあれこれ。
年中ムキューっ
志賀、昼の顔。
The Right ? Staff
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年末恒例の「今年を漢字一文字に表すと?」では、暗いイメージの字が多かった。それに輪を掛けるようで悪いが、4日の店をそれで表現すると『暇』である。そりゃそうだ。えらい寒さである。夜半には雪が降る。しかもしっかり降っている。必然的に街に人がいない。

午前2時前に入ってきたお客様が「志賀さんの車、雪積もってましたよ」と言うので見に行くと、確かに真っ白である。雑巾で叩くと、まだ固まる前の白い粉雪は埃のように飛び散って、ブルーのボディが現れた。ひとまず安心して店に戻る。

4時頃、店を閉めまずエンジンを掛けに行く。この季節は特に暖機運転が必要だ。僕の車に詳しい人でないと解りにくい話だが、この車にはドアノブがない。そして鍵穴もない。つまり、キーレスエントリーのリモコンだけが頼りだ。以前、この電池がなくなって往生した(死語)ものだ。替えの電池が、なぜか英国と中国でしか生産していない。手に入るまで一ヶ月近く、鍵が開いたまま乗っていたこともある。今では、予備の電池を持ち歩いている。

さて、リモコンで鍵を無事に解除し、ではどうやって車のドアを開けるか?ボディにボタンがあって、それを押すのである。誰もが驚くギミックだが、流線型のボディデザインを崩さない工夫は、アルファロメオの一部に採用されたウインドウ一体型ドアノブくらいしか思い当たらない、優れものである。
僕はいつものように、それを押そうとした。

押せない。凍ってる。えらいことである。ここは極寒の北欧でもないのに、ドアノブの無い車の辛いところである。そのプッシュボタンを擦って、温める。何度も押してみる。パキッパキッと音がしてボタンはいつもより半分ほどしか中に入らないが、なんとかドアが開く。しかしドアも、隙間に入り込んだ雪が凍っていていつもよりは開かない。手を伸ばし、エンジンを掛ける。幸いにも掛かったエンジンが暖まるまで、店に戻って後片付けをした。

数分後車に戻り、ボタンを押そうとしたがまた固まっている。また擦る。端から見れば、僕は車上荒らしのようである。またパキッと音がして、ドアは開く。同じくボタンは元に戻らずに半分のところで止まっているが、なんとかドアを閉め暖まった車で帰路に着いた。

運転席からは窓越しにそのボタンが見える。信号待ちの度に見ると、やはり半分で止まっている。それは「半ドア」の可能性を孕んでいる。飛行機の翼が見える窓際の席に座った時に、回っていないプロペラや、流れ落ちるどす黒いオイルを見ているようである。これはスリリングだ。ちなみに、カクテル・シンガポールスリングはシンガポールスリリングではない。(そう言ったお客様がいた)
そして心配は現実となった……。

スピードを増すと、冷たい外気が隙間からヒュウヒュウと入り込むようだ。この車の剛性の関係でそれは多少知っているのだが、何か違う。ヒュウヒュウからゴォ〜っと音を立てて運転席のドアが少し開いた。僕は咄嗟にドアを左手で持ち、右手でステアリングを操舵する。僕は元来器用な方だが、この運転はマニュアルミッション車でもあるゆえ、非常に難しい。車を路肩に寄せて、閉めてみる。鍵穴にお湯を入れる話は聞いたことがあるが、プッシュボタンにお湯はかなり危険だ。何度かの挑戦でドアは閉まり、また車は家へと向かう。

人間とは現金なモノである。元通りになって最初は慎重な運転も、スムーズに走り出すと早く帰りたい一心で、僕はまたスピードを出した。するとどうだろう。ちょうど須磨を過ぎた辺りで、今度は突然にドアが大きく開いた。

「うおぉ〜!」今度は完全に開いたのだ。左手を思い切り伸ばしドアを掴み、ハンドル操作を小刻みに、ブレーキングはポンピング、クラッチも慌てることなく、僕は高橋レーシングチームかジャパンアクションクラブの一員か、ジェームスボンド・007の如く、車を運転し続ける。なんてカッコイイんだろう。

「俺って、キーハンターみたいやん」と最初は思ったが、「それってナニ?」とこのサイトの読者に突っ込まれそうなので「俺って、石原軍団やん!」と思いもしたが、あんまりあの軍団には入りたくない(僕は演技派でいきたい)ので、『一人チキチキマシン猛レース』状態だというのがなんとなく近いな、なんて運転しながらマジで考えたりしていた。僕はいつもイレギュラーには強い。

かくして僕は、そのまま閉まらないドアを手元に引き寄せながら運転を続けるという、なんともシマラナイ状態で無事駐車場に辿り着いた。


※本日のダジャレー男爵・伝言板
【いやほんまに、自分に起こったことと考えたら結構笑える、いや怖いことでしょ 今年もまたネタ探しを続けますわよ!おほほ】

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