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■ 中毒性日記 2002
志賀のひとりごと、日記に綴ってみました。
変態小説家
志賀による、「志賀」を舞台にした空想連載小説。
志賀自賛
志賀の、「志賀」にかけた想いのあれこれ。
年中ムキューっ
志賀、昼の顔。
The Right ? Staff
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葉巻を買いに、いつもの中華街を横切る。途中お客様の営む食材店に立ち寄り、フカヒレバーガーなるものを買う。さすがに観光客の如く、食べ歩くわけには行かずに持ち帰る。今日も暑い。

6月29日、土曜日。南條の結婚式に招かれ、大阪のホテルにいた。それは散々書いた。でも、これからのことは少し僕の中では「素敵な」想い出として、心に置いておこうと思っていた。なぜか今日書きたくなったのは、梅雨の狭間に顔を出した太陽に気持ちが和らいだのかも知れない。

あの日僕は数人の仲間と、披露宴の後夕方から行われる二次会までの間、ホテルのカフェにいた。大阪に住む知人の女性との初お茶飲みデート?なのに、入れ替わり神戸製鋼の酔っぱらい達が隣に座る。結局、みんなで他愛のない、しかし楽しい話をした。そして僕はトイレに立った。

トイレはカフェの中にはない。ロビーのそこに行くと、鏡の前には、今まさに婚礼が終わったと思しき人々がネクタイをはずす。僕もシャツを脱ぎ、着替え、カフェへと戻る。ロビーを歩いていると、僕の左には女性が2人、階段を下りようとするのが見える。奥の女性と目が合い、一瞬「!」と驚いた表情を見せた彼女が「志賀さん!」と声を上げた。2年ぶりだった。

彼女とはお客様を通して知り合った。背は170cm、当時東京の雑誌の専属モデルで活躍し、CMにも出ていた外見は申し分ない女性である。僕の好きなブレンダの仲間でもある一流のモデルでありながら、僕を惹きつけたのは関西出身の彼女の気さくさにあった。僕はギャップで人を好きになる。綺麗なだけの彼女なら、僕はそれほど24時間の何パーセントも彼女について考える事はなかったと思う。

彼女は明るかった。人にも優しかった。そしていつも僕の言う、彼女に対する思いを「どうせみんなにそう言ってるんでしょ」という言葉でかわした。彼女とは何度か会ったが、互いのタイミングと、僕の強引さに掛けたアプローチは次第に二人を引き離し、結局「大事な想い」は伝えられずにいた。プラトニックとはこういうときに使う言葉なのだろう。その後は、たまに交わす携帯メールが二人を繋ぐ唯一のツールで、それもどちらからともなく音信が途絶え、時は過ぎた。

結局何も始まらなかったし、終わりもなかったのだから、彼女のことは遠い記憶の彼方に置いていた。思い起こすこともしなかった。いや、ただ今はどうしているのかとか、またみんなで会うこともあるのかなぁと、ほんの少し頭を過ぎることはあった。しかし、後輩の結婚式の同じホテルで別の式に参列し、たまたま席を外したその時間に再会するとは……。この偶然に必然を感じ、驚き混じりの僕の声は、一瞬出ない。そして絞り出すように「奇遇だねぇ、今はどうしてるの?」と伝えたかった。が、それはすぐに、目に見えた事実にかき消されてしまう。大きなお腹、彼女は妊娠していた。

その後少し話した。なぜか清々しい気持ちになっている自分に気付く。「また、いつかね」そういいながら歩く方向は同じだけど、僕はカフェに、彼女は左の階段を手を振りながら下りてゆく。それが今の二人の関係を物語っているようで、僕は「ふっ」と笑いながら、何事もなかったようにカフェの仲間達の元へと向かった。違った意味で、また忘れられない結婚式の日となっていた。

                     『披露宴の日の偶然』 完


※志賀私的伝言板
【その後の二次会、弾けていたあのテンションはそういう経緯もあってのことだ フィーリングカップル10対10に於いて、男性軍(懐かしいなぁ)はプロ野球選手や神戸製鋼ラグビーの苑田・平尾など豪華メンバーの中、僕は10番目、所謂「オチ」を任され健闘したと思う 結果は……おほほのほ、である】


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