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■ 中毒性日記 2002
志賀のひとりごと、日記に綴ってみました。
変態小説家
志賀による、「志賀」を舞台にした空想連載小説。
志賀自賛
志賀の、「志賀」にかけた想いのあれこれ。
年中ムキューっ
志賀、昼の顔。
The Right ? Staff
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『感動的な映画に足を運ぶように、やはりサングラスとハンカチは持って行くつもりでいる』昨日の日記はこう結んだ。

誰よりも知っているなんてことはあり得ないが、僕はある程度昨日の主役「南條賢太とさくら」を知っていて、深い思いで彼等を見ていた。そんなわけで、涙腺が特に緩んできた昨今、それは予想できたことだ。

僕はホテル勤務時代に婚礼担当を経験し、バンケット・サービスに於いて、驚くほどの披露宴を見てきた。もちろんその中には、感動的なものもあったが、ホテルマンが泣いてるなんて少し可笑しいし、その経験からどこか客観的に観てしまう、悪しき癖が身に付いたように思える。

それはコンサート・ライブのプロモーターにも同じことが言えるだろう。彼等はいつもいい思いをしているわけではない。実際知人にそんな人がいるが、そう羨ましいことばかりではないと聞く。いつも主観を持って挑むものでありたいが、そういった立場ならそれも仕方がない。

その点今回の婚礼は違った。僕は他人でありながら、主観も入っていたし、何よりも主役に見入っていた。さくらちゃんの両親への手紙を、彼女自身が読むシーンには、もう「えらいこと」になっていた。僕の席は後ろの方で、しかも僕の場所は彼等には背を向けて座る恰好になっていたので、来賓のメッセージには、上半身を反転させて見ていた。しかし、クライマックスになるとイスも体も前に向け、僕は彼女の手紙の朗読に挑んでいた。そして「それ」は程なく溢れ出てきた。

このテーブル、僕の背後にはキャプテン苑田や弟分・平尾や桑原がいて、何やら声がする。「志賀さん、泣いてるんちゃうの?」僕は暗転の中、スポットライトに浮かび上がる水色のドレス姿のさくらちゃんに見とれ、緩み始める涙腺に身を任せていた。なぜか持ってきたサングラスは、偏光レンズではあるが、最近多い黒くないものなので、掛けていても全く意味がない。

泣くことが格好悪いわけではないが、少しばかり後輩達に気恥ずかしい思いで、振り返ることはしない、ハンカチも目に運ばない。誰にも気付かれることなく、僕は頬に伝う涙を流れるままに、決して俯くことなくずっとその光景を目を凝らして見ていた。僕の涙は、少なくとも披露宴では誰にも見られていない。完璧だ。ところが……

さくらちゃんと僕の丁度真ん中に、暗い中うっすら見えたニヤニヤ笑ってる奴がいる。「おっさん、涙腺弱すぎや!」その顔はそう物語っていた。前キャプテン・増保は一部始終をずっと見ていたのだ。

市原悦子に見られた心境だよ。


※志賀私的伝言板
【披露宴お開きの後、お帰り口金屏風前の彼等と対面し、賢太が泣きながら僕を抱きしめた時にはもうそれは凄いことになっていた 「よかった、よかった」としか言えない僕はただの情けないオヤジと化していたのは言うまでもない】


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