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■ 中毒性日記 2002
志賀のひとりごと、日記に綴ってみました。
変態小説家
志賀による、「志賀」を舞台にした空想連載小説。
志賀自賛
志賀の、「志賀」にかけた想いのあれこれ。
年中ムキューっ
志賀、昼の顔。
The Right ? Staff
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雨が降り、梅雨らしくなったのは結構だが、この寒さはいただけない。北海道でまた雪が降っているのには驚く。夏に向けて、エアコンの洗浄を業者さんに依頼しようと思っていたが「まだいいか」なんて思うところが、歯が痛くなくなったので歯医者に行かない人みたく(この言い回しは悪しき言い方、「つんく」の歌詞によく出てくる、イヤな感じ)現金なもんである。

実際僕は今、歯医者(神戸製鋼ラグビーの優勝記念写真が飾ってある、いつもその前で治療するときには、選手に弱みを見せているようで厭である)に通ってるのだが、待ち時間にふと何気なく携帯をチェックする手の平を見た。誰しも、心に残る傷の一つや二つあるはずだ。それがいい想い出として語ることの出来るものとなったり、辛くて深いものになることもあろう。僕の手の平には、「二つの疵(キズ)」が残っている。そう、あの痛みは忘れもしない……。

あれはまだ僕が10代の頃のことだ。右手の平、手首に程近い中央には「鉄条網」を掴んだ時の傷がある。

僕はまだ血気盛んな頃で、もしかすると棘のある「キレル」と何をしでかすか分からない若者だったかも知れないが、所謂不良にならなかったのはラグビーをやっていたお陰だと思う。格闘技的要素のあるスポーツは、憤りを相手に向けることが可能であって、不謹慎ではあるが公然の喧嘩とも言える。僕が相手に、ボールの持っていないところでいきなり殴られ負傷した後、その相手にプレー中、仕返しをしてくれたチームメイトを今でも覚えている。

24時間スポーツに携わるわけではないから、その発散の場所はもちろん他に向けられる。しかし僕は高校時代アルバイトもしたし、その辺は健全だったと思う。学校、クラブ活動、バイト、帰宅。その生活リズムは崩さないでいたつもりだった。少なくともあの日を迎えるまでは……。

左の手の平中央には、ナイフを受けた傷が鮮明に残っている。もう店を始めて間もない頃だったから7年近くになる。あの日は、ひどく雨の降る夜だった。

若者が「心にナイフをいつも忍ばせて」なんていうのならまだしも、もう僕は30歳をとうに過ぎていたし、心ではなく本当にナイフを持つ自分が少し怖かった。今から起ころうとする現実に立ち向かうために、まさに目の前にはだかる対象に怯えもせず、冷静でいる自分が恐ろしかったのだ。そのナイフの切れ味は既に知っていたし、コレに切り刻まれるものは、いつ切られたのかその痛みも分からない内に僕の前にひれ伏すことであろう。その時僕は、まだその刃が僕に向けられることを、知る由もなかった………。


「その傷とは何だったのか?」と、まだ疑問に思う人はいるだろうか。仕方ない、お教えしよう。右手は少年院を脱獄した時のもの、左手は喧嘩して向かってきた相手のナイフに左手で立ち向かい刺されたもの……なんて、想像してくれたとしたら思うつぼなのだが生憎そうではない。

右手はね、高校ラグビーの合宿で門限に送れたから、塀を乗り越えたときに握ったやつ。左手は、新品のナイフで旨そうなウォッシュタイプのチーズを切っていて、手を滑らし落下するナイフを、なぜか左手の平で受けた時に刺さったやつ。反射神経って怖いモンだね。あぁ悲しい、アタシ傷物だわ!


※志賀私的伝言板
【「ナイフのように研ぎ澄まされた」とは、よく比喩される表現ではあるがその先に続くものとして、鋭い「眼光」や「感性」だと思ったアナタは、ポピュラーなハードボイルド小説の読み過ぎである 僕が小説を書くのなら「ナイフのように研ぎ澄まされた、五木ひろしのその瞳は……」あれは、研ぎ澄ましたのではなく目が細いだけか くだらんな、座布団持ってってくれ!】


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