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■ 中毒性日記 2001
志賀のひとりごと、日記に綴ってみました。
変態小説家
志賀による、「志賀」を舞台にした空想連載小説。
志賀自賛
志賀の、「志賀」にかけた想いのあれこれ。
年中ムキューっ
志賀、昼の顔。
The Right ? Staff
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僕は基本的に自炊をしない。独り者の野郎だから外食が多くなる。店に入る前に夕食を済ますことが多いが、それが出来ないときには張り紙をして近くに食べに行く。15日の金曜もそうだった。こんな時は、ほとんど中華。ちょうど店の裏手にあり、玉突き屋同様、店の電話・コードレス子機の電波が届く。行動半径は限られるが、コードレスは有難い。自宅では、隣に住む『佐川満男』邸に行くときにも、十分届くし便利なものだ。しかし、この中華屋では他のお客さんは僕の子機を見て不思議に思っているだろうな。まだ、出始めの頃の携帯みたいに、テーブルに立ってるし。いずれにせよ安心して食事を摂れる場所ではある。

神戸に来て8年。最初に住んだのは、兵庫区平野。有馬に抜ける街道の入り口で、下町の香りが残る。当時仕事の都合で毎日ハーバーランドに行っていたので、自転車で通える範囲のここを選んだ。不思議と京都にもある地名「祇園」「三条」「御所」少し西には「北山」「熊野」などが多かったのにも惹かれた。

休みのある日、初めて周辺を歩いて散策する。春には花見に良さそうな、桜並木のある川が流れ、人が集まる温泉がある。卵だけを売っている店、毛糸やボタンが並ぶ店、小さな電気屋(表にナショナルの乾電池自販機がある!)。コーヒーのおいしい、カップの選べる喫茶店。『紅い薔薇』という名の、表からは何屋か解らない怪しい店…。夕方になり、小さな商店街に入る。肉まんを売る店。昔ながらの八百屋、魚屋。見てるとだんだん腹が減る。右に蕎麦屋、左に中華。空腹を満たす食事をするにあたり、大衆中華に当たりはずれは少ない様に思う。これから生活していく町で開拓も必要だ。

赤いのれんのその店は、カウンター6席、テーブル席も4名掛けがふたつしかない小さな店だ。中にはお客はいない。カウンターに一人、子供が座って漫画を読んでいる。年の頃は小学生低学年くらいか。中に入ると、その男の子「いらっしゃい!」とカワイイ声で言う。おそらくここの子供だろう。「何しましょ!」とこれまたカワイイ声で言うので、微笑ましいお手伝いに敬意を表して、僕は注文をする。この上階が家なのか。親はいつも子供に留守番をさせているのであろう。ところがその後、彼は予期せぬ行動に出る。「はいよ!」と威勢良く厨房に入る子供。カウンター越しに頭が半分しか見えない。それでも、少し時間は掛かったが、注文の品はしっかり出てきた。普通に旨い。帰りに子供にお金を払う僕の複雑な気持ちをよそに、彼はまたカワイイ声で「ありがとうございましたー!」と言った。程なくカウンターに座って彼は、読みかけの漫画を開いていた。

『子供のやってる大衆中華』この話をあなたは信ずるか否か。しかし答えはもうそこにはない。その店が続いているとしたら子供はすでに高校生で、今更ネタにもならずに普通である。

「小さい大人だったんじゃないの」……あまりに寂しいイデオロギーだ。


志賀死語29
『帳面』:ノートの意 辞書「字引」、チョーク「白墨」など小学校語 靴を「ズック」ということも
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