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■ 中毒性日記 2001
志賀のひとりごと、日記に綴ってみました。
変態小説家
志賀による、「志賀」を舞台にした空想連載小説。
志賀自賛
志賀の、「志賀」にかけた想いのあれこれ。
年中ムキューっ
志賀、昼の顔。
The Right ? Staff
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14日は雨だった。本格的な梅雨。ラグビーの古傷は下手な天気予報よりも当たる。背中が痛い。 その日、足下の悪い中、紳士・T氏は来てくれた。他にお客様がいないこの店で、ゆっくりと時は流れる。今、T氏はカルティエの時計購入を考えておられる。やはり僕からすれば高価な買い物だけど、もしかしたらT氏のステイタスには茶飯事なのだろうか。 「いいですね。僕なんて時計に贅沢な執着無いですからね」 「僕だって初めてこんなにいいモノを買うんだ。なんで買おうと思ってるかというとね…」

T氏には2人のお嬢さんがいて、23歳のお姉さんには同じ歳の彼氏がいる。彼は、近頃の子にしてはしっかりしたいい男で、自分のゴルフクラブを喜んで(お嬢さんには「使い古しで、どうせ捨てるもんだし」なんて言ってるそうだが)あげたらしい。その二人が今後どうなるのか判らないけれど、女系家族に入る新しい同胞として、娘を嫁がせる相手には何か残したい。T氏は、昨年お父様を亡くした。残ったものは趣味だった掛け軸、数百本。価値があるものも中にはあるが、受け継いだものとして手放さず大切にしまってあるらしい。そんな思いも重なって、2100年まで時を刻むカルティエを、しばらくは自分で身につけながらも、身内となる息子同然の人にいつか…。

何度か書いたが僕はビリヤードに少しうるさい。今から思えばとんでもないことだが、25歳の頃、19歳から始めた玉突きに競技指向を意識しだしたときで、新しいキュー(棒のことです、念のため。僕の母親は「持ち歩くの大変やねぇ」とキュー=球だと思っていた)をその当時『58万円』で買ったことがある。それを手にすると、急に巧くなるわけではないけれど、愛着を感じてそれに向き合える様に努力するのだ。周りの目もあるので、宝の持ち腐れにならないように、違和感無く使いこなせるように、日々精進する。端的に言えば、成長してそれと同化するということなのだ。つまりは、高い車や洋服は決して「乗られたり、着られたりしてはいけない」わけで、そんな人には魅力を感じない。さりげなく、その人とそれらは自然であるべきだ。

そのカルティエを相手に渡すタイミングが、T氏の気持ちの中に芽生えるとしたら、それはステイタスなんかではなく、当然年齢でもなく「その受け継がれしものと対峙するために、自分を磨き同化できるように努力し得る、魅力とその可能性を秘めた人」が現れたときであろう。

しかし、あんなカルティエをもらえるのならT氏にお聞きしたい。

「妹さんには彼氏はいるんですかねぇ…」

僕はセコイ。


志賀死語28
『熱気ムンムン』:エアコンがつぶれた店で、ABCアナ小縣裕介が言っていた。君の方が一年中、日焼けしてて「熱気ムンムン」「ムッシュムラムラ」やで。
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